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「走るのが大好きな子達なんだってね。だから、この大会で私の走りを見てもらいたくて、この日にって決めたの。」
「姉貴ならきっと優勝だよ♪よっ!日本のエース!!」
音羽家は六人姉弟で、長女の"律"、次女の"明流"、三女の"凛"、四女の"藍"、五女の"沙羅"、そして末っ子で長男の"蓮"。
両親はすでに病気で他界しており、そのせいもあってか姉弟の絆は硬い。
三年前まではコーチであるさくの家で暮らしていたが律も陸上で名を上げ、明流も社会人として働き始めたので両親の残した家に帰ることとなった。
「律ちゃん、今日のレースは絶対に負けられないんだからね。必ず優勝してよ。」
さくがベンチの隣に座る。
「えぇ、任せてくださいコーチ!今日は体調ばっちりですから。」
「なら安心できるわ、頑張ってきてね!」
「はい!」
律は元気よく返事すると立ち上がり、競技コースに向っていった。
この競技はレースと呼ばれ、走者をレーサーという。
普通の短距離走とは違い、蛇のように曲がりくねったコーナーや急斜面などがあり、大きく違うのは隣のレーサーとは壁で遮断されていることにある。
そしてその区切られたレーンを一周毎に交替しながら全てのレーンを走り切らなければならない。
この日の律は3レーンからスタート、予選レースの始まりである。
目の前の赤いランプが光り、それが青になった瞬間にレーサーが一斉に飛び出した。
律の走りは快調そのもので、ぐんぐんと他のレーサーを引き離す。
ベンチから見守るさくも驚くほどに。
しかし、不幸とは常に幸せのすぐ隣に存在するものである。
律が一周を走り終わり、隣のレーンへ移ろうとした瞬間に今まで感じた事のない激痛が律の足を襲う。
「あ゙ぁぁぁァァ!!」
律の悲鳴が会場を駆け巡る
「姉貴!!」
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