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律はその場で倒れ、体を小刻みに震わせながらうずくまってしまう。
「律ちゃん!?・・・」
さくはただ茫然としており、その状況を理解できない様子だ。
「このままじゃ後ろの奴にやられちゃうよ!姉貴しっかりしろぉ!」
明流の必死の叫びが響く。
このレースはただのレースではなく、レーサーの基礎体力の他にシューズやスーツに特殊加工が施されており、一流のレーサーとなると時速80㎞を越すこともできる。
明流の叫びも虚しく、律はその場から動こうとしない。
「姉貴!早く立たないと、本当に死んじゃうよ!」
叫び続ける明流。
「何でスタッフは駆け寄らないんだ?」
周りからそんな声が聞こえる。
確かにスタッフは一人も助けようとする気が無い。
全てのレーンが壁で覆われているため、その場にいるスタッフは壁が邪魔で見えないと言えば確かだが、連絡くらい入るはずである。
「痛い、動けないよ…助け…て…ぁ…」
かすかに動く律の唇。
その時、ついに後続のレーサーが律の真後ろにきた。
そのスピードは時速80㎞を確かに越えるものである。
『あれ?…私、飛んでる?…そっかぁ…私は死』
彼女がそう思いながらゆっくり目を開けると、そこには知らない女の子がいる。
スタッ、
地面にゆっくりと着地する感覚が律の背中に伝わる。
『ダイジョウブ デスカ?』
律は微かな意識の中その質問に答えようとするが、すぐに気を失ってしまう。
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