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「危なかったねぇ、でも助かって良かったね♪沙雨」
「まったく亜夢のおかげよ。一流のレーサーだと聞いてたけど、レース中に足を壊すなんて、とんだ姉だわ。」
亜夢、そして沙雨と呼ばれた少女ら。
そこに明流とさくも駆け寄り、続いて医療スタッフも駆け寄る。
「姉貴、大丈夫か!?……てめぇら、なんですぐに姉貴を助けに来なかった!あ゙ぁ?」
明流がスタッフの一人の胸倉をつかむ。
「よしなさい明流ちゃん、今は喧嘩してる場合じゃないよ。」
さくが止めようとするが明流は聞かない。
「ふざけんな!あのまま姉貴が死んだら、どう責任取ってくれんだ!?黙ってんじゃねぇよ!!」
明流が殴り掛かろうとした時、沙雨と呼ばれた黒い服の女の子がスタッフの頬を平手で叩く。
「今はこのくらいにしといてください。」
「お、おまえ…ちっ、しゃぁねぇ」
やっと明流から解放され、律の様子を見て担架で運ぶスタッフ達。
「律ちゃん、しっかりしなぁ」
さくが今にも泣きそうな声で律に話し掛ける。
白い壁、白いカーテン、白いベッド、清潔感を実体化させたような病室で律は寝ており、明流とさくが付き添っている。
「姉貴の足、肉離れなんて可愛いくらい、筋肉がやられちまってるらしい。」
「そぅなの…」
「引退、するしかないって医者が。」
明流が医者から言われた診断結果をさくに告げる。
今まで沢山の苦難を供にしてきた愛弟子のまさかの引退。
それに涙しないコーチがいるであろうか。
さくは泣き、途方に暮れている。
ガチャッ、
ドアが開く音がし、廊下から二人の女の子が入ってくる。
「あぁ、さっきの子か。そいやお礼がまだだったな、本当にありがとう、君達のお陰で助かった。」
明流がそう言うと、先程まで泣いていたさくが立ち上がり二人の前に行く。
「さっきは忙しくて紹介できなかったから、紹介するわね。これから貴女の家と私の家で預かる事になった『沙雨』と『亜夢』よ。」
話に聞いていた双子の姉妹。
運動神経が良いとは聞いていたが、姉を助けて担いだまま軽やかに飛ぶ姿が何よりの証拠である。
沙雨と呼ばれた子は黒い服に身を包み、髪をツインテールにしている。
亜夢と呼ばれた子はショートヘアーで、白いワンピースがよく似合う子である。
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