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ガチャッ
病室のドアが開き、三人が振り返る。
「コーチ、気分はどうです…か?」
部屋を出た時よりも明らかに気力が下がり、肩が落ち込んでいるさくの様子を見た明流は何か嫌な予感を感じた。
さくの後ろから現れた先程の女性。
「だ、誰だアンタ!?コーチの知り合いか?」
明流が女性に話し掛ける。
「私の名前はエックス、とご主人様が名乗れと。
ここで正体をバラしてはいけない、とご主人様が」
「はぁ?まぁ、とにかくアンタ!いったい何しに来たんだ?」
「私は事実を伝えにやって来ました。律さんの事故は事故ではありません、人為的なものです。」
エックスの説明が続く。
「律さんを襲ったのは他でもない、田宮なのです。
そこにいる二人が育った施設は単なる養護施設ではなく、田宮が作ったクローンレーサー育成施設なのです。
田宮はさまざまな理由で赤ん坊を集め、その子達を教育し、毎年行なわれる運動会でデータを収拾し、強いレーサーを掻き集めてクローンを作る。
そして、そのクローンレーサー軍団で世界を狙うつもりです。」
エックスの説明を聞き唖然とする面々。
「ちょっと待ってくれ!その田宮はなんで姉貴を狙うんだ?」
明流が納得いかない表情で質問する。
「それについては回答不能です。しかし私のご主人様の推測によると、月光さくさんへの宣戦布告かと。
証拠として律さんが苦しんだ瞬間の映像を解析すると、こんな物が発見されました。」
エックスがノートパソコンを取り出すと、その映像を流し始めた。
そして律が苦しみ始めたシーンで止まり、映像をズームさせる。
そして何倍にもズームし、その証拠を見せた。
「な、なんだこれは!?」
「これは…本当に田宮さんの仕業ですか」
「許せない……」
明流、亜夢、沙雨の怒りは頂点に達していた。
「これが動かぬ証拠です、とご主人様の分析結果です。それと、おそらく会場のスタッフも全員田宮に買収されていたと思われます。」
そこに映し出されたのは、まるでサソリの様な小さな灰色のマシンが律の足に針を刺す映像である。
「私のご主人様は以前、田宮の元で研究していましたが、田宮のやり方に反対し孤立して研究を続けてきました。
まだご主人様が田宮の元にいた頃に相手の筋肉組織を破壊し、再起不能にさせるナノマシンの開発に携わっており、今回は完成したそのナノマシンを律さんに打ち込んだのでしょう。」
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