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墓、墓、墓、墓・・・・。
でも青い空と緑に囲まれた公園墓地は暗さのかけらもなく、むしろさわやかな心地よい場所に感じた。
ここなら亡くなった父も、お墓を用意した母も納得しただろう。
管理人さんに墓の場所を尋ねてそこに向かう。
父の墓は小さく、墓標には名前と出生年、没年、そして、事故で死んだ魂の鎮魂と、負傷した人達の回復への祈りをテーマにした抽象画が彫られていた。
「事故で亡くなった人たちのことを思うとお墓を大きくなんてできないわ。」
母がそう言っていたのをふいに思い出したが、それでも父の墓には花がいくつも捧げられていて、お参りをしてくれる人がいるのだと胸が熱くなった。
僕は肩に担いでいたヴァイオリンケースを地面に置いて女王を取り出す。
そして軽く調弦すると、『シャコンヌ』を弾きはじめた。
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