3.孤独な悪魔

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いつもはせかせか歩いている僕も、墓場の穏やかな雰囲気があまりに心地よくて、ゆっくりと、そして、本当に歩いている実感がないくらいにゆったりと歩いていた。 すると向こうから見覚えのある老夫婦が歩いてきた。 「…。」 父の両親、すなわち僕の祖父母だ。 僕は少し動悸を感じる。 だけど、ここに来れば再会もあるだろうと予想していたし、おたおたしても仕方がない。 だから僕は、精一杯笑みを浮かべて手を差し出し、「お久しぶりです。」と声をかけた。 しかし、老夫婦は何事もなかったかのように僕とすれ違う。 そして、そのまま通りすぎて行った。 「…。」 思わず振り返ったけれど、老夫婦はそのまま公園の中を突き進んで行く。 僕ってわからなかった? そうかもしれない。 前に会った時、僕は小学生だった。 仕方がないな、と公園の出入り口までとぼとぼと歩く。 管理人が声をかけてきた。 「ああ、さっきブラッキン夫妻とすれ違わなかったかい?」 「…。」 「さっきここで、”ヴァイオリンを担いだ孫が来てるよ。”って俺が言ったら、”そうかい。”って言ってたし、感動の再会だったろう!」 「…。」 僕はとりあえずお愛想笑いだけはして、そのまま足早に、駐車場に待たせているタクシーに向かった。 感動どころか無視された。 祖父母は僕だってわかっていながら無視をしたんだ。
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