3.孤独な悪魔

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タクシーの中から夕方の風景を見ながら考えていた。 祖父母については今更何も思わない。昔の価値観を引きずった哀れな人達だ。 それよりも、何故僕が今ここに、“ひとり”でいなきゃならないんだ! 僕にとってはそれこそが問題なんだ! タクシーを降りた駅前の広場は帰宅の人達でいっぱいだった。 皆、仕事や学校を終えて家族の元に帰っていくんだろう。 僕と同じ年代の奴らは皆カップルでイチャイチャしているし、僕だけがこれからひとりで誰もいないホテルに帰る。 本来なら、今日にはレコーディングもすっかり終わって、今ごろはルドやG社の有志達と、夜の街に繰り出して遊び回っているはずなのに。 ふてくされながら切符を買っていると、突然突拍子もなく、歌声が流れてきた。 上手くもないヘンテコなフォークソング。 それでも音の方向を見ると、そこには人が数人集まっていて、自前のステージで、男女二人がストリートライブを始めていた。 いかにもアマチュアっぽい歌い方だけど、透き通った歌声は心地よく、瞬く間に人が集まってきた。 すると、他の場所からもギターとボーカルが聞こえてきた。 ちょっと音程は外れているけれど、金髪の髪を逆立てて、頬に何やらぺインティングしているイケメンのボーカリストの前には、可愛い女の子たちが張り付くように集まっていて、ノリの良い手拍子を送っている。 その手拍子に、ふと、昨日テレビで観た、ユウコのコンサートでの割れんばかりの拍手の音が重なった。 感動に興奮した聴衆たちの表情。 そして、ユウコの素晴らしいカプリース。 “僕”がいなくたって、ヴァイオリニストはいくらでもいる。 ルドだって、いつ僕の元を去るか。 祖父母にすら無視された僕なのだから…。 「…。」 僕はその場にヴァイオリンケースを置くと、ケースを開けて『女王』を取り出した。
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