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ホテルに帰っても、やっぱりルドはいなかった。
僕はソファに座って彼に連絡しようかどうか迷っていたけど、話しをしたところでどうせ帰っ来ないだろう。
用と言っても、明日のスケジュールの確認くらいしかないわけで、やっぱり電話はかけずにそのままにしておく事にした。
電話をベッドに放り投げ、そして自分もベッドに飛び込んで大の字に転がる。
「…。」
ふと思い出して、ズボンのポケットに入っている紙切れを取り出した。
下着姿の女性が所狭しと並ぶそのチラシは、出張の娼婦屋のものだった。
指揮者の奥さんなど、マダム達からの誘惑に事欠かない僕は、マスコミに売られるのが怖い事もあって、街の女性にはとんとご無沙汰だ。
だけど、今は何となく人恋しい。
だから電話をかけてみた。
「女の子をひとり。早急に。」
そして来客を待つ。
「…。」
5分待ったけど来ない。
確かに受付のお姉さんは30分待ってと言ったけど。
でも寂しい僕はそんなに待てない。
もう一軒、別の店に電話してみる。
5分待ったけど来ない。
また別のところに電話してみる。
そうこうしているうちにインターホンが鳴った。
ドアを開けると、僕とあまり年の変わらないくらいの女の子が、「は~い、ケン・シュミットさんかしら?」と小首をかしげた。
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