第四章

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お風呂場は、二階にあった。 一瞬の出来事だったであろうが、ゆっくりゆっくり落ちていったように感じた。 休みの日に遊んでくれた父の顔、いつも守ってくれた兄の顔、優しいお祖母さんの顔。 大好きな人達の笑顔が次々と思い出された。 ああ…何故こんな目にあわなければならないの… あの時、お父さんに引き取られていれば、もっと幸せになれたかな… 私は意識を失っていた。 運良く、小窓の真下はゴミ置き場だったので、大きな怪我をしないで済んだ。 意識が戻った頃、私は自分の部屋とされている、押し入れの中で横になっていた。 誰かが運んでくれたのだろう。 その時、叔母さんに呼び出された。 「素っぱだかでゴミの上で寝てたら、ご近所さんにうちらが変な目で見られるやろが。ええ加減にせぇよ」 と言いながら、傷だらけの私を何度も殴った。 私は「ごめんなさい」と連呼する事しかできなかった。 というより、それしか許されなかった。
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