第二章

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夏休み、普通の子供にとっては嬉しいだろう。 けれど、兄が私ぐらいの年齢の時から私と同じ用な事をされ続けていた兄にとって、夏休みは、苦でしかなった。 兄は自分が学校に行っている間、私が母の犠牲になっている事を知っていた。 父の前では、殴られた痣は決して悟られないように気を配り、見られてしまっても、外に遊びに行った時に転んだだけだと言っていた。 平日に外に出た事など一度もなかったのに。決して父にだけは言ってはいけないんだと何故か私は強くそう思っていた。 けれど兄の前では、母に怯えてみせたり、二人でお風呂に入る時に痣を見せて、母にされた事を話せた。 兄は私に、「僕もお父さんに話した事は一度もない。だからお前も言っちゃダメだ。夏休みの間は一緒だから、ちゃんと守ってあげる」 そう言ってくれた。 兄にとって夏休みは、最悪な心境で迎えるだろうが、私にとっては、兄がいてくれるんだと思うだけで、楽しみでしかたなかった。 そして、夏休みが始まった。 相変わらずの毎日だったが兄がいてくれるので少し気分は違った。 夏休みから一週間ぐらいたった時だろうか…いつもと同じ用にオシッコを漏らしてしまった。 そしてすかさず私めがけて母は殴る。 いつもならここで兄がかばってくれる。 けれどその日はすでに兄は、殴り蹴られしており、ヘトヘトになっていた。 兄も辛かった。私の分まで殴られて、それでもかばう毎日だったから。 泣きながら私の事を見ていた。 その時、 ピンポーン チャイムがなった。 「宅配便でーす」 私は見知らぬ宅急便の人に心から感謝した。 母は手を止め、玄関の方へ向かおうとした。 その瞬間、兄が私の手を掴み、急いで玄関に飛び出した。 走って階段を降り外まで。 私はびっくりした。 きっと母も宅急便の人もびっくりしただろう。 でも一番びっくりしたのは当の本人、兄だった。 体が震えている。 手をつないでる私にまで振動が伝わってくる。 私達は外に出る事を母に禁止されていた。 この後の事を思い、怖がっているんだという事が私にはわかった。 グゥゥーーー 私のお腹がなった。 私がクスッと笑ったら、兄もまた笑いだした。 私達家族のマンションの一階はマクドナルドだ。 階段から降りて外に出た私達はマクドナルドの前にきていた。 美味しそうな匂いがして、お腹がなったんだと思う。 「はぁ~食べたいなぁハンバーガー」
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