第三章

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目が覚めた頃、私はお祖母さんの家で横になっていた。 お祖母さんは心配そうに私の顔を覗き込む。 そして目に涙を溜めながら、笑顔を見せてくれた。 母はあの後、私をおいたまま家に戻り、お祖母さんの残高の少ない通帳と印鑑、受け取ったばかりの年金を持って、何処かに行ってしまったらしい。 私はあの時、母に捨てられた。 けれど、辛い.悲しい.寂しいという感情は、不思議なぐらいなかった。 それどころか、喜んだ。 母から解放され嬉しかった。 大好きなお祖母さんとこれからずっと一緒にいられると思うと、幸せで涙が止まらなかった。 けれどそんな幸せも長くは続かなかった。 母がお祖母さんの通帳や年金を盗んでいったせいで、現金がなかった。 仲良くしている近所の方に深く頭をさげて、お金を借りていたのを見た事がある。 また年金を受け取っても、借りたお金を返したりして、すぐになくなってしまう。 お祖母さんに私を育てる余裕はなかった。 そして私もそんなお祖母さんを見ているのが辛かった。 私がいなければ、お祖母さんはこんなに苦しい生活をしなくてすむ…私がここにいては迷惑なんだ… そして私は、母の姉、叔母さんの家に引き取られる事になった。 今の私がこの時に戻れるのならば、あそこには絶対に行きたくないとお祖母さんに訴えるだろう。
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