ぼくがまもるのだ

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 すきなものは、みさちゃんとブタの耳。舌を出しながら、走る。 ――キーンコーン、カーンコーン  聞き慣れた音にさらにスピードをあげた。なんとか間に合ったらしい。ぼくはハッハと息を整える。 「おまたせ」  間一髪。みさちゃんがツインテールを揺らしてぼくを撫でる。 「アンッ」  ニッコリとお返事。みさちゃんをお迎えするのは、ぼくの役目だ! みさちゃんは赤いリードを手に取る。ぼくの首についている、邪魔なやつだ。 「いつもありがとう」  みさちゃんと一緒におうちへ帰る。みさちゃんは、ガッコウからの帰り、いつも楽しそう。 「みさちゃんっ」  二人で歩いていると、うしろから男の子の声。みさちゃんの足が止まる。 「たっくん」  振り返って浮かべる困った笑顔。あれ、みさちゃん? ぼくも男の子を見た。 「忘れ物だよ」  男の子はニヤニヤしながら、みさちゃんの手に何かを乗せる。 「いやあっ」  するとすぐにみさちゃんは手をぶんぶん振り、乗せられたものを地面に落とした。みさちゃんは泣いてしまった。ぼくを抱きしめ、わんわん泣く。  何だろうと見ると、ゴムのにおいのするカエルだった。男の子は腹を抱えて笑う。ぼくはムカムカした。大好きなみさちゃんを、泣かせるなんて! みさちゃんは、ぼくがまもる! 「グルルルル……」  歯を剥いて、威嚇する。途端に男の子は、涙目になる。 「な、なんだよ、薄汚い犬がっ」 「わんっ!」  一喝すると、わああっと男の子は座り込む。みさちゃんの泣き声が止んだ。 「ジョン……強いっ」  ぎゅううっと抱きしめられる。少し痛かったけど、えっへん胸をはる。  ぼくはそっとみさちゃんの頬をなめる。しょっぱい味がした。
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