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「ゆーきやこんこ、あられやこんこ、ふってもふってもまだふりやまぬ」
どこからか、懐かしい歌が聞こえてきそうな雪の日。白い雪は、ぐるぐる円を描きながら、地上に積もる。
「ねぇ、」
降る雪をながめる黒い犬に、私は話しかけた。
「楽しいの?」
犬は私の言葉に耳もかさず、しっぽをゆったり振りながら、雪を見つめている。
しんしん、そんな擬音がぴったりの天気。黒い犬の見つめる先を、私もなぞった。
空はもう真っ暗で、雪だけが街頭に照らされている。
「へっへっ」
犬は真っ赤な舌を黒い体から出すと立ち上がり、まるで雪を食べるかのように、空に向けて口をパクパクした。
先ほどまで犬が座っていた箇所は、ぽっかり雪が積もっていない。私ははしゃぐ犬を見て、寒さに赤らいだ鼻をすすった。
「わー!」
私も犬と同じように、空に口を開いて走り回る。犬は私を迷惑そうに一度見たが、そのまま歩いていってしまう。こちらを振り返ることはなかった。
「わー!」
私はもう一度叫ぶと、闇に消えていった犬の後ろ姿を探した。
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