20人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
俺はバーのカウンターで、良い生地で仕立てられたスーツを着た男に声をかけられた。
50歳くらいだろうか。
深くなりかけた皺さえも、魅力に感じさせる整った顔立ちをしている。
「君は大学生かい?隣、いいかい?」
脇田と名乗る男は親しげに俺に話しかけた。
人をそらさないオーラのようなものが出ている。
人によってはフェロモンだというだろう。
脇田は俺の隣に座り、しばらく世間話をしたあと、俺にバイトの話を持ちかけた。
「実は、妻に浮気がばれてね。愛人を引越しさせなくてはならない。
ついでに愛人には男がいるからもう安心だ、という筋書きを作りたいんだ。
君ならモテそうな顔だし、妻も信じるだろう」
俺は酔っていたし、男が渡してきた封筒には帯がついたままの札束が3つ入っていたので、勢いで引き受けてしまった。
この美味しいバイトは、脇田の愛人と一緒に家を探し、一緒に住むこと。
期間は一ヶ月。
.
最初のコメントを投稿しよう!