他愛ない日常

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 並木通りの枯れ葉散る欅を眺め、もうそんな時季なのかと沁々と頷きたくなる。  季節と共に道行く人々のお召し物はなるべく肌の露出を控えた内向的な物に変わり、こうして見ると半袖は稀少種、いや、危惧を通り越した絶滅種だなと実感できる。  息を吐けば白くこそならないが、季節風が唯一外気に触れる顔の肌を突くような寒さで撫でるもんだから、もうこんな季節だと改めて再認識させられた。  頭上の青空には雲ひとつないのが乾燥気候の証明。肌が引きこもりたくなるのも無理はない。  こう、極東の気候はどうしてこうも爽やかじゃないのかねぇと誰に言うわけでもないが夢想する。  しかし、子供は風の子とは良く言ったものだ。  ふと、はしゃぎ声を聞いて公園を見ようものなら、そこには寒さを享受している子供達の姿があった。  その内のひとりの男の子なんか、半袖半ズボンだ。寒さを享受し過ぎたあまり、逆に寒さに嫌悪されて彼の周りだけ人肌並みに暖かいんじゃないか?  一見ガキ大将率いる彼らは、鬼ごっこに興じているのだろうか、個人が多人数を追いかけ回している図がそこにある。
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