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断崖絶壁に囲まれた離島にそびえ立つ巨大な神殿の最上階、華美な装飾品に彩られた玉座の間。
壇上に据えられた荘厳で巨大な王座の椅子に、ゆったりと腰掛ける年老いた竜人の姿をした魔王が口を開く。
「よくぞここまで辿り着いたものよ。褒美としてこのワシ自らの手で奈落の深遠へと誘(いざな)ってやろうぞ」
その声は、青き光沢を放つ鎧を身に纏い白銀に煌めくロングソードを竜人に向けた青年に向けて放たれ、神殿内を埋め尽くすかの様に怪しく響き渡った。
青年の鎧や剣に無数に附けられた細かい傷跡が、この場に至るまでの壮絶な道のりを物語っている。
「終わらせてやる……俺達の未来を俺達自身の手に取り戻す為に!」
青年はその宣言が終わると同時に、両手で剣をハスに構えたまま魔王の腰掛ける王座へと連なる段を駆け登る。
それを見て取った魔王は右手を高々と振り上げた。
王座へと駆け登る青年へ数々のイカズチの牙が襲いかかる。
青年はそれを高速ステップで左へ右へと軽快にかわし、王座への距離を詰めていく。
続けて魔王は青年に向けて左手をかざす。
ごおおおおおおぉぉぉぉ!
青年に向けて、ミゾレの粒混じる凍てつく吹雪が襲いかかる。
しかし青年は怯む事なく、剣を握る両手を顔前へ構え拝む様な姿勢で、風圧に負ける事なく魔王へと突き進む。
魔王は自分へひたすらに迫り来る青年に軽く舌打ちすると、かざしていた左手からの吹雪を止め、玉座のすぐ横に添えられている鈍く赤光りする杖を握り締めた。
その杖を青年に向け振りかざすと灼熱の炎が放たれる。
青年は自分に襲いかかる炎を剣で下から上に凪ぎ払うと、そのまま一気に間合いを詰め魔王へ上段から剣を打ちおろす。
きぃぃぃぃぃぃぃぃん!
魔王は玉座に座ったまま杖でその剣を受け止める。
「シャイニングブレード!」
打ちおろす剣を受け止められると同時に青年は力ある言葉を唱えた。
魔王の頭上に白く輝く光の剣が降り注ぐ。
「ぬおおおっ!!」
魔王は降り注ぐ光の剣を避ける為、青年の剣を押し弾き玉座から立ち上がる。
剣ごと弾き飛ばされた青年はすぐに態勢を立て直し、剣の切っ先を魔王に向けて構える。
仁王立ちする魔王は青年に向けて不敵な笑みをうかべた。
「このワシを玉座から立ち上がらせるとは面白い。気に入ったぞ、ワシも少々本気を出させてもらおうかのぅ」
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