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玉座から立ち上がった魔王に対峙する青年の頬を一筋の汗が流れ落ちる。
しかし、勇者の本当の武器とは何者をも恐れぬ強い勇気。
青年は弾き飛ばされ開いた間合いを再び一気に詰めると、白銀に光る剣に自分の有りったけの魔力、気力、思いを込めて魔王に振り下ろした。
「ちょっ!? 久しぶりに立ったから、足しびれて……」
ザンッッッッ!!
ふらつく魔王の肩口に青年の渾身の一撃が決った。
「ぐおおおぉぉぉぉぉおお!!」
断末魔をあげて崩れ落ちる魔王。
「勝った! 俺はとうとうこの手で魔王をやったんだ!」
魔王は仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
「だが断る!」
魔王は尚も仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
「だが断る!」
魔王は今にも泣きそうな顔をして仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
「だぁ~っ! しつこい! 仲間にすりゃあいいんだろ!?」
魔王が仲間になった。
「じゃあまず……装備全部よこせ! ほらっ、お前にはこのひのきの棒をくれてやる」
「ううっ! 兄貴ヒドイ!」
「……兄貴じゃねぇよ! 俺の事は勇者様と呼びやがれ! ジジイ!」
こうして勇者と魔王の波乱万丈な旅が始まったのであった。
終
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