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「OK、そうと決まったらそれ以上雨に濡れないうちに早く乗ってくれ。本当に風邪でも引かれたら大変だからな。」
「うん、それじゃあお願いします。あっ、でもあたし濡れてるからシート汚れちゃうけど…」
「そんなん気にしなくていいから。いいから早く乗りなって。」
リョウがそう促すと、彼女は笑顔で助手席側のドアの方へ歩いていった。
そして彼女が軽く「失礼しま~す」と言いながらナビシートに乗り込んだのを確認すると、リョウはいつもの様にミッションを確認し、クラッチとブレーキを踏み込みながらキーを回す。
一瞬のセルが回る音の後に、重低音のきいた「ボォォン」という音と共にCA18エンジンが目を覚ます。
乗りなれている車なのに、いつもの事ながらセルを回す瞬間というのは、何かを掻き立てるように胸が高鳴るものだ。
リョウはその心地よい胸の高鳴りを感じながら彼女に話しかけた。
「で、家はどの辺なんだ?」
「あ、えっとね、朝日ヶ丘の3丁目辺りだよ。わかる?」
「えっ、朝日ヶ丘3丁目?」
「ん?どしたの?」
「俺も同じとこに住んでるんだけど…」
「うそ!?マジで??」
と、彼女が言い終わるか終わらないうちに、下品な爆音を出した2台のワンボックスカーが入ってきた。
見たところ外車の様だが、その2台の車は下品な爆音と同じように、下品なエアロ、無意味に極限まで下げられた車高で装飾(?)されていた。
(ちっ、なんか嫌な予感がする。面倒な事にならなきゃいいが。)
その予感を的中させるように例の2台は、リョウを挟みこむようにシルビアの両脇に車を停める。
「あたし、ああいう車って好きじゃないんだよねぇ」
無視した訳ではなかったが、リョウはそれには答えず、念のために両ドアのロックを掛けていた。
やはりといったように、2台のワンボックスからは1人ずつ男が降りてきて、シルビアの運転席側を乱雑にノックしてきた。
「なんすか?」
少しムッとしながらもウィンドウを半分ほどまで下げた状態でノックに答えた。
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