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なぜか息を切らし、鋭い眼光を向けている女子中学生(?)と思われる髪の長い女の子が立っていた。
しかも傘をしてこなかったのか、着ている制服は結構濡れている。
(な、なんだこの子は?いくら弱い雨だからって傘ささないでくるか?…ってか何でこっち見てんだろ…)
などと、半ば戸惑いながらもそんな事を考えているリョウだったが、彼女の鋭い眼光に気圧されて、半歩程後ずさりしたことには自分でも気付いていないようだった。
リョウはその場の気まずさから、
「あ、あのさ…」
と、言い出したとほぼ同時に
「それ…はぁはぁ…」
「へ?」
自分の言葉が遮られたのと、彼女が急に話し始めた事に動揺して思わず裏返るような変な声がでてしまった。
「それっ!その雑誌!…あたしが朝から狙ってたの!」
「は、はあ…、そうなんだ…」
「今月の『フルスロ』だけは絶対に見たいの。だから、それあたしに譲ってよっ!」
「……」
余りにも強引で、突然な申し出に最初は困惑し開口したまま言葉も思考も止まったままだったリョウだが、
(ま、ずぶ濡れになりながら一生懸命急いで走ってきたんだろうから、ちょっと惜しいが譲ってやるか。それに女の子がこういう雑誌に夢中になってるのも面白いもんだ)
一呼吸置いて、ふぅと息を吐きながら
「わかった、ずぶ濡れの格好でそこまで言われたら譲るしかないな」
というと、自然な笑顔で彼女に『フルスロ』を差し出した。
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