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「ん?そうなんだ?まあ、気にしない気にしない♪」
一応彼に誤解が無いように説明させてもらいたい。
リョウいう人物は、いたってごく普通の見た目の青年であり、ごくまれに『おじさん』と呼ばれる事があったとしても、それは親戚の小さな子供からぐらいなものであった。
それを恐らく10代半ばであろう女の子に言われたのでは、さすがに反論せずにはいられなかった。
「おまっ…気にしないってな~、言われたほうは結構キズつくんだぞ?…ってお前、さっきより濡れてんじゃねぇか!」
「ん?ああ、大丈夫大丈夫。あたしん家はここから15分も歩けば着くし。ってかおじさんみたいな人でもキズつくんだぁ??」
「あのね、だから俺は『おじさん』じゃないの。それに『みたいな人』ってなんだよ。はぁ、まったく。この雨の中で15分も傘ささないで歩いてたらマジで風邪引くぞ?」
「おお~、心配してくれんだ?やっさし~ね~♪」
彼女の腰まであろうかという黒く長い髪が、まるで風呂上りのように濡れているのにも関わらず、彼女は全く気にしていない様子でニヤニヤした表情でからかってくる。
「ふざけてる場合じゃねーだろ。とりあえずさ、送ってってやるから乗りなよ。歩いて15分の距離なら車で5,6分てとこだろ」
リョウは彼女の身を案じた上での本心の言葉だったのだが、一瞬、彼女の表情に不安と迷いが表れたのをリョウは見逃さなかった。
(ま、当然だわな。断ってきたらコンビニでビニール傘でも買ってやればいいっか…)
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