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「なんでも借金があったみたいで」
「定職にもつかず毎日酒浸りだったみたいよ」
「冬美ちゃんも可哀想に」
「そういえば弟さんも小さい時に亡くなっているんでしょ」
噂好きの近所の住人たちのとめどない会話。
俺は胸クソが悪くなって、焼香も早々にその場を退散した。
式場にはクラス連中のすすり泣く声が聞こえてくる。
それほど親しくもなかった女子が抱き合って泣いていたりと、いまひとつ真実味がなくて俺は顔をしかめた。
俺は誰にも気づかれずに佐伯の姿を探した。
身体があるのならすぐ近くにいると思ったからだ。
佐伯の姿はすぐに見つかった。
川近くの式場のため、枯れかけた草の上、土手に腰を降ろしていた彼女は、昨日会ったままの制服姿だった。
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