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「椎名くん」
俺が隣に座ると佐伯はバツが悪そうな顔を向けた。
「あたし、……死んでたんだね」
戸惑いを隠せない、そんな声だ。
「お父さんに、ちょっと注意しただけなんだけどなぁ」
酒に酔った父親はカッとなって佐伯を突き飛ばした。
倒れたところが運悪くテーブルの角に当たり、意識不明になったらしい。
すぐに救急車を呼べばまだ間に合ったかもしれないのに、父親は気が動転してしまったらしく、家を飛び出した。
しばらくして帰って来たときには、佐伯の息は事切れていたのだ。
死因は、後頭部強打の脳挫傷。
怖くなって自分がしたことを隠蔽しようと、娘の遺体を山中に埋めた――。
そう父親は自供した。
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