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子供が危なしげに足を取られ、尻餅をついた。
泣いた。
大きな声で泣いているのだろう。
けれど俺にはその声は聴こえない。
聴こえ、ないのだ。
――――幽霊の。
**
ふと、誰かの気配がして顔をあげた。
辺りを見渡すと、そこには制服姿の佐伯冬美が立っていた。
夕焼けの茜色が彼女の白い頬を染めている。
肩に届く長さの黒髪、クラスの中で特別目立つわけでもない、至って平凡な彼女。
けれど俺は知っている。
「佐伯……?」
おそるおそる訊ねた。
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