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  ぼんやりと視点の合わない彼女が俺の声に気がつき、焦点があう。 「あれ、椎名くん?」 鈴を転がしたような軽やかで綺麗な声を。 「おまえ、どうしたんだよ。一週間も学校来なくて。みんな心配してたんだぞ」 彼女を見る限り、汚れた箇所もなければ怪我をしている風でもなかった。 あまりにも普通であったのだ。 「そうなんだ」 まるで他人事のように、佐伯は首を傾げただけだった。 「――あのね、椎名くん。あたしね、小さい時に弟がいたの」 「なに? いきなり」 基本的に俺は、あまり人に話しかけない。 彼女とは日直で一緒になった時、少し言葉を交わした程度の仲だ。 「昔、夏にこの川で弟と二人で遊んでてね、あたしが目を離した瞬間に弟は川に流されちゃったの」 夏の水難事故。    
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