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  ** 昨日はなかなか寝付けず、珍しく遅刻ギリギリに登校すると、クラスはざわついていた。 もしかしたら、佐伯が来たのかもしれない。 そう、小さな淡い期待はすぐに打ち消された。 「どうしたんだ?」 友人に訊ねると、 「あぁ、椎名。佐伯の父親が捕まったんだよ」 「……え?」 一瞬、何を言っているのかわからなかった。 *** 眼の前にある佐伯の姿は高校入学時に撮ったものなのか、まだ幼さの残る、あどけない笑顔だった。 下手な読経が耳にざらつく。 業者から雇われた坊主なのだろう。 養父の方がずっと上手いというのに。  
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