第五章

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押し倒されて仰向けにされた体制から、手に持っていた空の(弾が入っていない)拳銃を投げつける。 銃弾と違い、目に見えたそれ…拳銃は、投げた瞬間に進行方向を変えると、投げた時よりも勢いをつけ、空気の壁に跳ね返ったように男の後方に跳ぶ。 だが、男は諦めず、牙の及ばない側面へと、叫びに乗せて拳を一振り。 「くそっ!」 『トフッ』 しかし、男の拳による打撃の威力は、化け物の分厚いゼリー状の表皮に吸い込まれ、音すら響かない。 そして化け物は笑った…口をうねらせて。錯覚だろうか? 改めて見ると、笑ってなどおらず。完全に開かれた化け物の口からは、牙がもぞもぞと動く様子が見えた。
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