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その牙の動きを見た男は背筋に悪寒を走らせ、更に恐怖し、顔を引きつらせた。
すると、表情を見る『目』が無いはずの化け物は、男が諦めた事を感じて、一気に口を押し当てて来る。
「うぎゃあっ…うげっ…うあ゙…あぐぇ」
男は、もう、人間の声なのかも疑うような悲鳴を樹海の奥深くに響かせるが、虚しくもそれは、その場で木霊(コダマ)し、消えていった。
数分後には、赤黒い色に染まった白衣が、惨めな程にぼろぼろとなって散乱し、
食べかすと思われる骨や髪の毛は、そこら中に生臭さを散りばめながら、無惨にも残されていた。
そして男を置き去りにして逃げた二人も、これと同じ末路を辿り、亡き者へ。
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