第五章

7/36

762人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
その牙の動きを見た男は背筋に悪寒を走らせ、更に恐怖し、顔を引きつらせた。 すると、表情を見る『目』が無いはずの化け物は、男が諦めた事を感じて、一気に口を押し当てて来る。 「うぎゃあっ…うげっ…うあ゙…あぐぇ」 男は、もう、人間の声なのかも疑うような悲鳴を樹海の奥深くに響かせるが、虚しくもそれは、その場で木霊(コダマ)し、消えていった。 数分後には、赤黒い色に染まった白衣が、惨めな程にぼろぼろとなって散乱し、 食べかすと思われる骨や髪の毛は、そこら中に生臭さを散りばめながら、無惨にも残されていた。 そして男を置き去りにして逃げた二人も、これと同じ末路を辿り、亡き者へ。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

762人が本棚に入れています
本棚に追加