影の王

第五章

そう記載されていた。

いや…今思っても仕方がありませんか。

サクラは深く息を吸うと、瞼をパチリと開き、盛大な溜め息を吐き出す。

「はぁぁ～」

そして、この二年間掘り起こさなかった記憶を今更掘り起こした事を後悔した。
あれから五年も過ぎたのに、まだ覚えてるなんて、何だかみっともないですね。

せめてあの日…

「あの日、終わらせていれば…」

まだ覚めない頭で、うっかりと言葉を漏らした。

あの日とは、自分の身に異常が起きた日。

それは自分自身が月影の魔力を受け継ぎ、初めて訪れた『カヴィンの日』。

はっきり言って、自分は何も覚えてませんでしたが。最も、言ったら怒られてましたね。