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「ねえ、私、宇宙人に会っちゃった」なんてもし私が突然言い出したら、話の相手はきっと可哀想な目で私を見るだろう。そしてこう言うに違いない。
「なに言ってるの? そんなわけないじゃない。夢でも見たのよ」
それに対して私は、いいえ、と答える。夢ではない。実際の話なのだと。
「すごくリアルな夢だったから現実と混同してるだけよ。いい加減、目を覚まして」
「いや、違う」と、私は断固首を横に振る。本当なのだから仕方がない。
しかし、突拍子のない話であるのは確かだ。信じられなくて当然かもしれない。そこで私は今度はこう言い渡すだろう。
「じゃあ、会ってみる?」
喉の奥で悲鳴を上げながら、私は跳ね起きた。高まった鼓動と荒い呼吸。しんと体に纏わりつく寒さで、頭が覚醒していく。
ピンクの布団カバーと、自分の汗ばんだ手のひらを見てようやく理解した。
夢か──、と。
しからば、こんな薄暗い早朝に起きている必要などまったくない。
私は再びほかほかの布団の中へと潜り込み、今度はよい夢を見られるようにと念じながら、眠りの世界へのダイブを始めた。
──はずであった。
「ちょっと……重い」
「…………え?」
体のすぐ横からかかる吐息。囁き程度でも聞こえる声。ひとつの布団には不必要な、
・・・・・・・・
もうひとつのもの。
──夢ではなかった。そう心の中で呟き、私は眠りとは別の世界へと己の精神を手放した。
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