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悪魔の店は、通学路である大通りから少し外れた路地にある。
その店に入ることは、難しい。
ふるびたビルとビルの寂しい隙間にぽつんと細長いドアがある。
注意して歩いていなければきっと通りすぎてしまうくらいの隙間。
見つけたとしても次にまた見つけられるかはわからない。
その店への道順を完璧に覚えたはずの私でさえも、五回に一回しかたどり着けない。
これは私が方向音痴だとか、物覚えが悪いとかそういうことではないと思う。
必死で探し歩いてるときは見付からず、ぼんやりと家までの道のりをとぼとぼ歩いているとき、ふいに思い付いて何気無くどこかの角を曲がってみると、たどり着いたりする。
あの黒いドアは、きまぐれに現れているような気がしてならない。
たぶん、学校でこの場所を知っているのは私だけなんじゃないだろうか。
誰にも教えるつもりはないけれど。
久しぶりに目の前に現れたドアを見つめながら、私はそう思った。
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