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恭しく、箱から人形を取り出す。先程より少し大きい少女の姿を象ったお人形。
今度の少女は、黒髪を肩口に切り揃えた黒い瞳の人形だ。真っ白な肌、真っ赤な唇。少し開いたそれは、今にも何か言葉を囁きそう。近くで見るとその精巧さに改めて感心した。
カップを私の方に押しやってテーブルを布巾で拭い縁に彼女を座らせた彼は、もう私の方を見ない。
まず彼は彼女の髪を一房掬い、口付けた。高貴な姫君に忠誠を誓うように。
そのあと毛先まで一撫で。
そうして彼女の頬に指を滑らせる。彼女の白い肌に負けないくらいの、透き通るような白さの長くてしなやかな指。よっぽどあの指の方が、作り物のようだ。
しかし頬を撫でる指先には熱がこもっている。血が確かに通っている。
血液型がないくせに、熱い血をこめて彼女の肌を滑るのだ。
これは手入れ、なんかじゃない。これはまるで。
「悪魔ってさ、なにができるの?」
私はなんだか何かしゃべらなくてはという気持ちに駆られ、何の気なしにそう聞いた。
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