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どれくらいの時が立ったのか。
私は今、屋上にいる。
何処の屋上なのかはわからない。
いつ、どうやって来たのかも…
只、そこから見える風景には見覚えのある町。
何処だっけ。
ついさっき見たかのような感覚。
よく思えばここに二人で来た。
「あ…」
隣にいた、笑っていたのは
「亮界……」
私の、元彼氏。
昨日捨てられたばかりの……
「そっか…………」
記憶が段々と戻ってきた。
私は警官から母の死を告げられた後、走った。
警官が追いかけてきたが、それも振り払って。
多分来たばかりだろう。
心臓が高鳴る。
それは走ってきたから?お母さんが死んだから?それとも亮界に捨てられたから?
でもよく走ったものだ。
家からここまで歩いて一時間。
いつもは必ずバスを使う。
今日私はこの道のりを歩いて帰ってきた。
「亮界…」
はっきり言って彼に未練は無い。
今日の朝いきなり「好きな人が出来たから、バイバイ」と家から追い出された。
嘘。未練たらたらだ。
愛していた。
大好きだった。
別れたくなんか、なかった。
「亮界ー……」
そして母を失った今。
私が頼れるのは彼しかいない。
今朝までは………
「運悪いな…」
。学費、これからの生活費…
うちは母が女手一つで私を育ててくれた。
しかし安月給。
だから貯金は少々。
私は母が大好きだった。
刃向かったのは昨日が最初。
「もう少し…」
優しくすれば……
会いたい……
会って謝りたい。
ここは屋上。
屋上と言えば……
私はフェンスに近寄った。
確か、十二階建て。
「ここから…落ちたら……」
お母さんの元へ行ける…?
しかし私の小さな理性はそれの考えを否定する。
駄目だ。
そんなの……
でもお母さんのいない生活なんて考えられない。
それに振った元カノが自分のマンションから飛び降り自殺…彼に打撃を与えられる……
「ダメ、駄目だよ…」
絶対にそれはしてはならないこと。
私が死んだら天国のお母さんが悲しむ。
それに愛した人にトラウマを作りたくはない。
結局私はフェンスから手を離した。
下を見てみるとかなり高い。
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