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空が真っ赤に燃えている。
その紅煉に相対する大地は煤(すす)けてひび割れ、そこには生命の息吹きを一切感じられない。
そんな、まるで世界の終わりのような景色を少年は倒れながら眺めていた。
手足の感覚は既になくなり、呼吸も既に虫の息。
(ああ…俺、死ぬのか…)
そう思いながら少年は唯一自由に動く瞳を辺りに巡らせた。
と、不意にその眼が1人の少女を捉える。
彼女は━泣いていた。
いつも身に纏っている鮮やかな鎧兜はあちこち砕け、双眸にはたくさんの涙を浮かべている。
と、彼女の唇が弱々しく動いた。
彼女が何を言っていたのか、少年にはもうわからない。
しかし、なんとなく感じる。
そう、彼女は「ごめんなさい」と言ったのだ。
けど、なんで彼女が謝る必要があるのだろう?
少年は既に動かなくなってきた頭で必死に思考したが、結局答えは見いだせなかった。
ただ、泣いている彼女を見るのは嫌だった。
彼女には、いつものように穏やかに笑っていて欲しい。
それが、自分が彼女に望むこと。
だが、そんな願いとは裏腹に少女の瞳からは次々と涙が溢れでる。
あぁ、頼むからそんなに泣かないで欲しい。自分がこうなってしまったのは、君のせいではないのだから…
そう言ってやりたかったが、もう少年は口を動かせなかった。
そして、泣いている少女を見つめたまま、少年の意識は闇に沈んだ…
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