プロローグ

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あの時は今日みたいな雨だった。 中3の頃 「どういうことだよ。引っ越すって」 この時は驚きのあまり涙すらでなかった。 「だから…その…親の転勤で…」 原田久美の目には涙がたまっていた。 「戻ってくることはないの?」 真剣な眼差しで久美を見つめる。しかし、久美は目をあわせたくなさそうだった。 「可能性はないことはないけど何年先になるか…」 俺は少し考えたあとに言った。 「…何年…何年かかっても戻ってくるって信じてるから」 自分でもこんな言葉が出るとは思わなかった。 「…ありがとう…」 最後は振り絞ったような声で言ったあと、去っていった。 背中を見送っているうちに頬を温かいものが流れ落ちたのを感じた。
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