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「かねてから天界は地上の行く末を危惧していた。いつか自分の手で自分の首を絞めてしまうのではないかと。それでも、天界は地上のやることに文句は言わなかった。それが、ルールってもんだからだ。だがな…、そうも言ってられなくなっちまったんだよ」
そう言うと、軽く目を伏せた。
言うことを、頭の中で纏めているのだろうか。
「地上は人間だけがデカくなり過ぎちまった。他の生物を虐げ、まるで自分達が一番偉いかの如く振る舞い、住家を奪い、汚していった」
「天界じゃあ、考えられないことだぜ。こっちじゃ、全ての生物は平等だ」
「なっ、なら、人類だけ滅亡させればいいじゃないですか。何も、丸ごと壊さなくても…」
言いよどみつつも、意見を述べる希。
そんな彼女に、紅蓮は少々驚いた顔をした。
「へぇ。``だからって世界を壊すなんて``とか、人類を擁護する発言でもするかと思ったが…。結構言うんだな。……まぁ、だからこそお前を選んだんだが」
最後のセリフは、とても声が小さかったため、希は何を言われたか分からなかった。
ただ、感心されていることだけ、理解できた。
「確かに、お前の言う通り人類のみ滅亡って考えもあった。でもな、もはや地上は全て一からやり直さざるをえないんだよ」
切なそうな表情を浮かべて、紅蓮は言う。
「地上は、人間がトップの社会が長過ぎたんだ。今さらトップを変えたとこで、何も変わりはしない。むしろ、今までトップだった奴らがいなくなることで、生態系が狂い、更なる混乱を招きかねない。残された手は``ゼロ``しかないんだー」
悔しそうにそう告げると、紅蓮は真直ぐ希の顔を見た。
紅蓮の赤い双眸と、希の黒い双眸がかち合う。
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