デミス

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「死ぬのは簡単だ。それは、いつだってできる。やり直しは利かないがな。……デミスになったら、このツマらない世界も結構面白くなるはずだぜ」 赤い双眸が、優しく、力強く、希を見つめる。 緊張や混乱といった類のものは消え失せ、希は今までに感じたことのない穏やかで安心した気持ちになっていることに気付いた。 「俺のデミスはお前しか考えられねぇ。何度だって問う。俺と一緒に、世界の終わりを見て見ないかーー??」 顎を掴んでいない方の手を、紅蓮は希に差し出した。 「…はい。喜んで」 ためらうことなく、差し出された手に己の手のひらを重ねる。 指を絡め、固く握りこまれ、二人は一つに繋がった。 希に拒否とか拒絶とか、そんなものは一切なかった。 純粋に世界の終焉とやらを見たいとも思ったし、目の前にいる色男とならツマらない日常が楽しくなりそうな予感もしていた。 「契約、成立だな」 男は楽しそうに、嬉しそうに笑った。 「じゃあ、次にお前にデミスとしての資格を与えよう」 一瞬、互いの鼻がぶつかった気がした。 「こうやるんだ」 そう言うと、紅蓮は勢いよく希に口付けた。
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