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「○→ヾ◆〓⇒∂!!」
突然の事に、希は目を白黒させた。
逃れようと身をよじっても、いつの間にか背中にまわされた腕がそれを阻止する。
繋がった左手は強く結ばれたままだった。
緊張と羞恥で希は真っ赤になり、固く目を瞑った。
震える手は紅蓮のジャケットを握り締め、自然と二人は抱き合う形になった。
(ん…。ひぃあぁ!!)
目を閉じたと同時に、希の体内に何かが入り込んできた。
ビクリ、震える体。
全身を流れる血が沸騰したように熱くなり、体の奥底から言い知れぬ力が這い上がるように湧き上がって来るのを感じた。
暴れ出したい衝動に駆られながらも、紅蓮に強く抱き締められ、不思議と落ち着くのだった。
あれからどれくらいの時間が経っただろうか。
数秒のような、数分のような、数時間のような、一瞬のようで、短いようで、長いようで、そんな時を二人は一つに重なったまま過ごした。
ゆっくりと、名残惜しむように希の唇から離れる紅蓮のそれ。
互いを銀色の糸が結び、闇に溶けるようにして、それは消えた。
「気分はどうだ??」
艶のある声で男は問う。
「変な感じ。熱くて、でもすごく心地良くて、気分はきっと良いんだと思う。なんだか幸せに思えてしかたなくて。こんなに満たされたの、生まれて初めてかも……」
たどたどしく少女は言う。
今自分が体験したことが理解しきれていないのか、頭がぼんやりとしてしまっているのか、普段なら恥ずかしいと感じるような台詞を言うのだった。
「そう。それは良かった」
妙に色っぽい声音言う紅蓮に、希は思わずドキッとした。
繋がった手を再び固く握りしめ、二人は一つになったまま消えた。
月は変わらず街を照らし、二人のいた場所には静寂が訪れた。
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