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時刻は午前六時。
目覚まし時計の音で、希は目が覚めた。
パジャマのままリビングに降り、朝から弟のためにせっせとご飯を作る母親を横目に、トースターにパンをセットする。
冷蔵庫から牛乳を取り出し、棚に置かれた紙コップを一つ手に取った頃には、軽い電子音を発ててパンが焼き上がる。
それらをテーブルに置き、無言で、かつ素早く食べる。
この間、会話は一切ない。
食べ終われば、紙コップをゴミ箱に入れ、洗面所へ。
ここでも手早く歯を磨き、顔を洗う。
顔を上げれば、鏡には仏頂面をした少女がいた。
「………」
そのままリビングを横切り、部屋へと戻る。
リビングでは、両親が弟に世話を焼いていた。
笑顔に満ち溢れた、自分には向かわれなかったその光景を、希は一瞬も目をやることなく通り過ぎた。
部屋に戻れば、あとは登校時刻になるのを待つだけ。
階段を上りながら、希はそんないつも通りの日常の始まりを過ごしていた。
二階に上がり、廊下の一番奥の部屋が希の私室だ。
そのドアの前に着くと、希は昨日現れた、この部屋の非日常を思い浮かべ、静かにドアを開けた。
「よぉ、準備とやらはもう終わったのか??」
非日常ー天界人改め紅蓮ーは、ベッドに腰掛けながら実に優雅な仕草で雑誌をパラパラとめくっていた。
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