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何もかもお見通し。
そう言いたげに赤い目が細められた。
「な…んで」
男の言った言葉に、希は強い衝撃を受けた。
自分が死にたがっていることなんて、誰にも言っていないのに。
心の中に閉じ込めた感情なのに。
どうして、分かったんだろう。
あまりに予想外の男の言葉に、希の頭は混乱していた。
「分かるよ。ずっと見てたから。ある``目的``のために、ね」
含みのある笑みを浮かべながら、男はそう言う。
希は自分の感情に気付いたこの男に、興味を覚えた。
そして、男の言う``目的``が何か気になっていた。
「どうせ家に帰っても、皆弟の世話で忙しいんだろう。大丈夫。そんなに時間は取らせないから」
希は驚愕で目を見開いた。
家の事まで、知っているなんて……。
「どう、話を聞いてみる気になった?もっとも、聞いたら協力してもらわなきゃいけなくなるんだけど。……``目的``のためにね」
右手を差し延べながら、男は微笑んだ。
月明りに照らされた男の顔は、酷く美しく、そして格好良かった。
「うん……」
ためらいつつ、希はその手を掴んだ。
男は笑みを更に強くし、次の瞬間2人の姿は消えた。
それに気付く者は、誰一人としていなかった。
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