デミス

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次に希がいたのは、あるビルの屋上だった。 それは先ほどまで男が希を見ていた場所で、周囲のビルのそれよりも高く、眺めの良い場所だった。 「なんで…。私、さっきまで…」 突然の事に頭がついて行けず、希は更なるパニックに陥った。 そんな彼女を、新たな衝撃が襲う。 「斉藤希。11月生まれの16歳。都内の学校に通う高校1年生。性格は穏やかで真面目。悪く言えば、消極的で自分の意見を言えないってとこか。まぁ、正確には``言えない``じゃなくて``言わない``なんだけどな。成績は中の上。部活は無所属。塾にほぼ毎日通ってる。ちなみにA型で、家族構成は父・母・弟の4人家族。父親は区役所に勤める公務員。母親は専業主婦。弟は生まれた時は体が弱く難病持ち。両親の強い希望で5歳の頃から自宅療養をしている。2つ離れているから、お前が7歳の頃からか。で、その甲斐あってか、現在病気はほぼ完治」 その声は、淡々と言葉を発する。 「ふーん。両親はいつも弟の面倒ばかりを見て、姉の存在など眼中にない。周囲の人間は子どもは1人だと思いこんでいる。……こりゃ、ひでぇな」 その内容は、全て自分に関するモノ。 希は慌てて、声の居所を探した。 そして、すぐに分かるのだった。 ーーーそれは希のすぐ後ろ。月を背に、空に浮かびながら発せられたものだった。
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