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混乱していた頭もようやく落ち着き、希は、今男が言ったことを頭の中で繰り返していた。
(この人は天界人、私とは違う人間…)
にわかには信じがたい話だが、炎を操るなど普通ではありえないことを見せつけられ、信じる他にない。
希は意を決し、男に話の続きを促した。
「じゃあ、話すな。まず基本的に、地上と天界は相容れない存在だ。地上には地上の、天界には天界のルールがあり、滅多な事ではないかぎり、俺達はこっちに来ることができない」
屋上。誰も来ないこの場所で、階下に見える景色を眺めながら、紅蓮は話し始めた。
「だが、現に俺は今ここー地上ーにいる。それはな、ある一部の者にだけ、地上に行くことが許可されたからだ。何故だか、分かるか??」
振り返り、希に問う紅蓮。
数秒ほど考えると希は、
「えーっと、…地上を観光しに??」
真顔でそう答えた。
そのあまりにも的外れな答えに、紅蓮は思わず
「ぷっ!!なんだぁ、それ??まぁ確かに、地上と天界は大分違うけどな。こんな高い建物も、そんなにねぇしよ」
腹を抱えて大笑いするのだった。
真面目に答えた希は、当然不機嫌になる。
「じゃあ、何なんですか??」
やや怒気を含んだ声で、そう尋ねた。
「ああ、悪い悪い。んじゃ、説明するな」
目元の涙を拭い、急に真面目な顔をすると紅蓮は言った。
「この世界を、地上を壊すためさ」
ぞくりとするぐらいの、冷えた笑みを浮かべて。
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