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その後は苦しさと辛さだらけだった。
それでも、強さを得ている感覚はあり、苦にはならなかった。
すべてが順調に進んでいたが、一つだけ心残りがあった。
それは…葵の事である。
葵はあの後、病院に運ばれて、順調に回復して、今は孤児院にいるようだ。
しかし、葵はあの日以来一切誰とも話さなくなってしまったらしい。
さっきから『だろう』や『らしい』を使っているのは、葵と未だ会っていないからである。
何回も会いに行こうと思った…
けど、あのビンタされた時の事を鮮明に思い出してしまい、どうしても孤児院に行く途中で歩を止めてしまう。
…あの時の続きの言葉…
何て言われるのかは何となくだけどわかってる。
母親を救うと飛び出したヒーローが結局救い出せずにいた。
…信頼を裏切り…
…逆に大切なものを奪った…
良い言葉な訳がない。
多分、憎悪に満ちている言葉である。
そんな言葉は絶対に聞きたくない。
自分の中にある美しい思い出だけでいい…
それ以外なんて聞きたくない…
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