卑怯的告白

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 僕──立花 裕樹(たちばな ゆうき)の通う私立聖華学院には、とても恐ろしい暴力女が居る。そいつの容姿は黒色長髪につり目。名は石崎 聡美(いしざき さとみ)。男がタバになって掛かっても勝てないほど喧嘩が強いらしい。  そんな少女を一目見たくなった僕は、校内中を捜し回った。しかし、それらしい人物が見付からず、半ば諦め掛けていると、擦れ違い様に少女と肩がぶつかった。  ごめん、そう謝ろうとして相手の顔を見た瞬間、僕の胸倉をその少女が掴んだ。 「どこ見て歩いてんのよ!?」 「ごめん。ちょっと人を捜しててさ。石崎さんって方なんだけど……」 「私を? 何の用?」  少女は僕の胸倉を放すと同時に首を傾げた。 「君が石崎さん?」 「そうよ」 「じゃさ、ちょっとだけ話ししない?」 「……あんた、この私に軟派でもしようっての?」 「いや、違うけど」 「そう。じゃ話すことも無いから行くわ」  そう言って立ち去ろうとする聡美を僕は引き留める。 「待って」  立ち止まり振り返る聡美。 「僕、立花 裕樹。よかったらお友達になってくれないかな?」 「いいわよ」 「それじゃメアド交換しよう?」  僕たちは互いに携帯電話を取り出して番号とメールアドレスを交換した。 「じゃ私、用があるから」  そう言って立ち去る聡美。  何だか聞いていた話しと全然違うな、そう思った時、遠くで男子の悲鳴が聞こえた。  気になって駆け付けてみると、そこには瀕死の男子生徒と聡美の姿があった。 「何か遭ったの?」 「こいつが私に喧嘩を仕掛けてきたのよ。だから熨してやったわ」  恐ろしい女だ……。  そう思いながら聡美のことを細い目で見ていると、彼女が振り向いて言った。 「何よ、その目?」  と、その時、僕の背後で声がした。 「お兄様、こんな所で何をなさってるんですか?」  その問いに振り返ると、背の低い金髪ツインテールの少女が居た。  彼女は僕の実妹(いもうと)の美野理(みのり)。炊事、洗濯、掃除、何でもこなせる少女だ。 「あ、美野理。ちょうど良かった。ジュース買ってきて」  聡美の言葉に美野理は震えながら後退りをした。 「何で私が? 自分で行けばいいのに」 「買ってこい!」  聡美は美野理を蹴り付けた。 「てめえ、妹に何してんだ!?」  怒りを込めた僕の問いに、聡美が振り返って答える。 「あら、貴方の妹だったの」 「お兄様!」  美野理が目に涙を浮かべながら僕にしがみつ
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