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あなたは影になって、やがて灰色の煙になりました。
私はぐるぐると回る天井を見上げて、声にならない声を上げました。
「もう好きじゃないはず」という感情が思いついたようにワッと湧き出て、不自然な涙になりました。
琥珀色の空を睨んで、あなたを憎みました。
「嘘はいけないよ」と言っていたあなたが一番嘘つきでした。
帰り道のあなたの横顔は、遠い知らない人に見えました。
今朝あなたのことを思い出しました。
あなたの顔はもう思い出せません。
あなたと過ごした日々だけが、ただぼんやりと思い出されます。
黒から灰に、やがては白く…
そんなふうに、時間とともに悲しみも薄れていくような気がします。
それはきっと前に進むためには必要なことであり、そうやって記憶を浄化できるのも人間の優れた点なのでしょう。
白い光を想像してみました。
あなたの背中を思い出しました。
再び灰色の煙に私は襲われて、声にならない声を上げるのでした。
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