裁き

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「俺も呼ばれたってことは・・・」 「音和さん、神が辞める発言したの、全く無視だなぁ」 「マジ、来なきゃよかった・・・」 神はため息をついた。 以前の神なら楽しめるはずのこの賑やかな空間は今の神にはうっとうしく思えた。 そんな神の不愉快そうな様子を遠くから、音和は鋭い目で見ていた。 「神、お前はこの世界に居るべき人間なんだ・・・」 そんなことを呟いていた。 深夜2時を回った頃。 まだまだ盛り上がりを見せる賑やかな室内の片隅。 音和が神達の元へと戻ってきた。 「楽しめたか?」 「はい・・・」 「そろそろ出よう」 音和の後に続き、神達は部屋を出た。 同じエレベーターには他の店舗の管理者が何人か乗っていた。 音和と親しく話をする様子を神は横目で見ていた。 エレベーターから降り、階段へ向かい歩く。 「何か、おかしくねぇ?」 椿が言った。 ただならぬ空気を察知し、椿が蓮に小声で話し掛ける。 音和は他の管理者の人と話をしながら歩く。ちょうど階段に差し掛かった頃、一人の男が神に目をやった。 その視線に気付き、神は足を止めた。 「何ですか・・・?」 その男はにやりと笑みを浮かべ、つぶやいた。 「これは、『裁き』だよ・・・」 「え・・・」 次の瞬間、 その男は思いきり神を突き飛ばした・・・!!! 神は階段横の手摺りにぶつかった。 が、神の腰程の高さしかない手摺りでは、 神を支えることはできなかった。 バランスを崩し、神は真っ逆さまに地上へと、 落ちた・・・。 「神っっっ!!!」 蓮と椿の必死の叫びがロビーに響いていた。 床に落ちた神の頭からは血が流れ、真っ赤な絨毯をいっそう赤く染めた。 音和は上から神を見下ろし、不気味な笑みを浮かべていた。
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