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シュワワワワ……ジ、ジジジジジ。
真剣な目の子供たち、花火に照らされていつもより少女っぽく見える加奈子の横顔を眺める。
ああ、そうか、そうだな。こうして線香花火を真剣に見つめなくなった時から人間ってのは大人になるのかもしれない。
ちらりと俺の顔をみてニコリと笑うと、加奈子はまた線香花火を真剣に見つめる。
朝顔の袖から伸びた細い指、小さな小さな火花を散らす火球。
ジ……ジジジジジ……ポトリ……。
ごうっ、と風がなってまた一瞬の闇が訪れる。
……こんな何て事はない夜に、少しずつ人は大人になるんだろう。
見上げた空にはきれいな月、夏の終わりを告げる虫の音を聞きながら俺は一つ、ため息をついた。
いつからだろう、線香花火を見つめなくなったのは。
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