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「あ、高宗くん」
「……牧野」
土曜日のショッピングモールで女子に声を掛けられ、ぶっきらぼうに返事をしたのは、コウ。
私のオサナナジミのタカムネくん。
「偶然だねっ。 ……彼女?」
「そんな訳ないだろ。 アンタ可笑しいよ」
「そっかぁ……えへ」
……えへ、じゃないだろう、女子よ。
コウの知り合いらしきこの女は、とんだドMらしい。
私なら「アンタ可笑しいよ」なんて言われたら、引っ掻く。首の後ろとか。
「へぇ、幼なじみなんだぁ」
「ん」
「いいなぁ、私幼なじみとか……」
「俺達これから飯食いに行くから。 じゃあね、牧野」
「え、あ」
会話を早々に切り上げられて、目を白黒させている女子を後目に、コウは私に顎を小さく動かすことで合図すると、その場を立ち去ろうと踵を返した。
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