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ハヤトが寄りかかっている建物の上に人影があった。
その立ち姿に、ハヤトは妙な違和感を感じた。
「ここにいたんですか。」
その人影がそう言うと、まさかとは思ったが、そのまま建物を落ちた。
「あぶねえ!」
ハヤトは思わず叫んだが、その長身の男が華麗に地面に着地するのを見て、唖然とした。
「探しましたよ。リンメイ。」
リンメイと呼ばれたワンピースの彼女は、男が恭しく差し出した手に、自分の手を重ねる。
「あなたが遊びに行って、私を放って置くからでしょう。」
そこまで言うとリンメイは、ハヤトを振り返る。
「ねえ、名前は。」
ハヤトはいきなり自分に話を振られて、内心どきっとしていた。
「ハヤト。」
彼女は満足したようにニコリと微笑む。
「そう。ねえ、ハヤト。」
彼女の瞳が妖しく紫に輝やいた。
「小夜は、どこ。」
「え…」
しかしリンメイは新たな人影がハヤトの目の前に現れるのと同時に、男と一緒に建物の上に居た。
その一瞬の出来事に、ハヤトの思考はついていけない。
「ハジ!」
分かったのは現れた人影がハジだということだけ。
なぜならハヤトは次の瞬間、ハジに気を失わされたからだ。
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