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今のカイは、ハジには良く分からないが、頼れるお父さんという感じだった。
「ハジ、今日も走って来たの?」
奏が、悪戯っぽい笑顔でハジに話しかけた。
その質問に答える前に、妹の響が奏の質問に答える。
「走ったんじゃないのよ!飛んで来たのよ!ね、ハジ。」
どちらも違うと言いかけて、ハジは口をつぐんだ。
「…私は飛びません。ですが、走ってきたわけでもありません。」
その答えを聞くと、不満そうに響が詰め寄る。
「だって、お父さんがハジは飛ぶって言ったんだよ!」
「…カイ…」
ハジは横目でカイを見る。
カイは案の定聞こえないふりをしていた。
ハジは、確かに飛べる。
けれどハジの背に生えた異形の翼は、過去に小夜を悲しませてしまった。
それ以来ハジは出来る限り封印してきたのだ。
「ねえ。やっぱり飛ぶんでしょう。」
響は更に詰め寄る。
そのころころ変わる表情や、自然と視線を惹き付ける足取りは、ディーヴァを思わせるくらい魅力的だった。
一方そんな響をなだめようとする奏は、どちらかというと小夜のようなおっとりとした雰囲気を纏っていた。
そして、リクの様な惜しみ無い優しさも兼ねていた。
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