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彼は声を張り上げると同時にハヤトを蹴り付けるのを忘れなかった。
「しかも息子をよろしくときたもんだ。」
ハヤトは目を見開いた。
「あんなことされたんじゃ、よろしくもなにもねえよなあ!」
くる!
ハヤトは無意識のうちに衝撃に備えて目を瞑った。
しかし衝撃は訪れなかった。
「だ…いつからそこに!?」
ハヤトは動く力のない体を叱咤して、来入者を見上げた。
「…ハジ?」
そのハジの漆黒の長身は、いつの間にか訪れていた夜の闇に紛れていた。
ハジの顔は少し近かった。
ハジの左手が、今にも蹴り下ろそうとしていた生徒の足を掴んでいる。
そのため屈んでいることに気付くのは、少し時間がかかった。
「なんで…ハジが…」
喋る度に口元にピリピリと痛みが走る。
「丁度、通りかかりました。」
ハジは嘘は言っていなかった。
だがハヤトは信じられず、声を上げようとして、背中に激痛が走り押し黙った。
「すぐ終わります。手当てをしないと。」
ハジには人間の傷のことは良く分からなかったが、ハヤトが辛そうなのは良く分かった。
しかしハヤトは、背中の痛みに耐えている途中、既に意識を失っていた。
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