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喧嘩の間潰してしまわないよう、ハジがそこに置いておいたのだろう。
風に揺られている薔薇を暫く見てから、ハヤトは視線を地面に落とした。
「…小夜ね。」
ふう、とハヤトは息を吐くと、勢い良く立ち上がった。
本当は背中が痛かったが、もうここには居たくなかった。
「俺、帰るわ。ハジ、あの薔薇届けに行くんだろ。じゃあ別々だな。」
ハヤトは話は終わったとばかりにハジに背を向けると、深夜の闇の中を歩き出す。
「ハヤト。」
不意に呼ばれ、ハヤトは億劫そうに振り向いた。
「なんだよ。」
「家族は、嫌いですか。」
ハヤトはその脈絡のない質問に眉を寄せたが、目を伏せて笑った。
「なわけねえだろ。」
そう答えると、今度こそハヤトの影は闇に紛れた。
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